要介護認定の申請方法・流れを完全解説|遠距離でもできる手続きガイド
「親がそろそろ介護が必要かもしれない」と感じたとき、まず立ちはだかる壁が要介護認定の申請です。
「どこに連絡すればいい?」「自分が遠くに住んでいても手続きできる?」「親が申請を嫌がっている……」——そんな悩みを抱えている方は少なくありません。
この記事では、要介護認定の申請方法を7ステップでわかりやすく解説します。さらに、競合サイトではほとんど触れられていない「遠距離からの代理申請」「訪問調査で損をしないための準備」「親を説得するための対話例」まで、子どもの立場で動ける情報をまとめました。
申請しないと、本来受けられる介護保険サービスがすべて全額自己負担になります。「まだ早い」と思っていても、今から流れを把握しておくだけで、いざというときに慌てずに済みます。
要介護認定とは?なぜ申請が必要なのか

介護保険サービスを使うための「資格証明」
要介護認定とは、介護保険サービスを利用するために必要な公的資格です。市区町村が「この人はどのくらい介護が必要か」を審査し、要支援1〜2・要介護1〜5の7段階で判定します。
認定を受けると、介護保険の自己負担割合(原則1割)でサービスを利用できます。認定を受けずにサービスを使うと、全額(10割)が自己負担になります。
申請しないと損をする理由
- 訪問介護・デイサービス・ショートステイなどの費用を保険でまかなえない
- ケアマネジャー(介護支援専門員)にサポートを依頼できない
- 将来の施設入所を検討する際にも「認定済み」が必須条件になる場合が多い
要支援・要介護の違いと7区分の概要
| 区分 | 状態の目安 | 月の支給限度額(2024年度) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 日常の一部に支援が必要 | 50,320円 |
| 要支援2 | 要支援1より支援範囲が広い | 105,310円 |
| 要介護1 | 立ち上がり・歩行が不安定 | 167,650円 |
| 要介護2 | 食事・排泄に一部介助が必要 | 197,050円 |
| 要介護3 | 食事・排泄・入浴に全介助が必要 | 270,480円 |
| 要介護4 | 日常生活全般に介助が必要 | 309,380円 |
| 要介護5 | 意思疎通が困難・全面的な介助 | 362,170円 |
※出典:厚生労働省「介護保険の給付について(2024年度改定)」

要介護認定は『介護の入口』です。サービスを使うかどうかはあとで決めればいい。まず申請だけでも早めに済ませておくと、急に状態が悪化したときに慌てなくて済みます。
申請の流れ——7ステップ完全ガイド

申請開始から認定通知が届くまで、標準で約30日かかります。ステップごとに「子どもがやること」を明記しました。
ステップ1:地域包括支援センターへ相談
子どもがやること:親の住所地を管轄する地域包括支援センターに電話 or 来所
地域包括支援センターは、介護に関する総合相談窓口です。市区町村のサイトで「○○市 地域包括支援センター」と検索すれば見つかります。
「まだ申請するか迷っている」という段階でも相談可能。「どのくらいの状態なら申請できる?」という質問にも丁寧に答えてもらえます。
ステップ2:市区町村に申請書を提出
子どもがやること:申請書に必要事項を記入して提出(窓口・郵送・代理提出いずれも可)
必要な書類:
- 介護保険要介護認定・要支援認定申請書(窓口 or 市区町村HPからダウンロード)
- 介護保険被保険者証(65歳以上の場合)
- 医療保険被保険者証(40〜64歳の場合、特定疾病が対象)
- 本人確認書類(代理申請の場合は委任状も必要)
ステップ3:主治医意見書の依頼
子どもがやること:市区町村から主治医に直接照会される。かかりつけ医の情報を申請書に正確に記載すること。
かかりつけ医がいない場合は、地域包括支援センターに相談すれば受診先を紹介してもらえます。
ステップ4:訪問調査(認定調査)
子どもがやること:可能であれば同席し、「普段の状態」を正確に伝える準備をしておく
市区町村の調査員が自宅を訪問し、約1時間かけて心身の状態を確認します。ここが最も重要なステップです。詳しくは次のセクションで解説します。
ステップ5:審査・判定
子どもがやること:この段階では待つのみ
調査結果と主治医意見書をもとに、コンピューター判定 → 介護認定審査会の2段階で判定が行われます。
ステップ6:認定通知書の受け取り
子どもがやること:通知書の内容を確認し、認定結果に疑問があれば早めに市区町村へ問い合わせ
申請から原則30日以内に「介護保険認定通知書」が郵送されます。認定証明書(介護保険被保険者証)も同封されます。
ステップ7:ケアマネジャーとケアプラン作成
子どもがやること:ケアマネジャーを選定し、希望するサービス内容を伝える
要介護1〜5の認定が出たら、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーに依頼して、個別のケアプラン(介護計画)を作成します。要支援1〜2の場合は地域包括支援センターが対応します。
訪問調査で「低く認定」されないための事前準備チェックポイント

訪問調査は、要介護度を左右する最重要ポイントです。多くの方が無意識にやってしまう「失敗パターン」があります。
よくある失敗:「しっかりしているところを見せようとする」
「親に恥ずかしい思いをさせたくない」「弱っているところを見せたくない」という気持ちから、調査当日に普段よりも頑張ってしまうケースが非常に多くあります。
その結果、実際の状態より軽い認定が出てしまい、本当に必要なサービスを受けられなくなることがあります。
準備すべきこと:「最悪の日の状態」を記録しておく
調査前の1〜2週間、以下の内容をメモや動画で記録しておきましょう。
記録しておく内容チェックリスト
- 1日のうち「最も状態が悪い時間帯」の様子
- 夜間の起き上がり・トイレの頻度
- 転倒したことがある場所・回数
- 食事・入浴・着替えで介助が必要な場面
- 認知症状(繰り返しの質問、場所の混乱など)の頻度
- 服薬管理の状況
- 外出時に迷子になったことがあるか
調査員に伝えるべきポイント
- 「今日は比較的調子がいい方です」と一言添える
- 普段の状態と調査当日の状態が違う場合は正直に伝える
- 書面で「生活状況のメモ」を渡してもよい(調査員はメモを参考にできる)

訪問調査は正直に伝えることが大切です。『しっかりしているところを見せたい』という親御さんの気持ちも尊重しつつ、子どもから調査員へ日常の様子を補足するだけで認定度が変わることがあります。遠慮なく話してください。
遠距離介護でも申請できる——手続きを代理で進める方法

「親が遠方に住んでいて、頻繁に帰れない」という方でも、申請はできます。
代理申請できる人の範囲
介護保険の申請は、本人以外が代わりに行うことができます。
| 代理人の種類 | 条件 |
|---|---|
| 家族・親族 | 委任状なしで可(申請書に家族欄あり) |
| 成年後見人 | 登記事項証明書を提出 |
| 地域包括支援センターの職員 | 相談時に依頼可能 |
| ケアマネジャー | 担当が決まっている場合に依頼可 |
| 民生委員 | 地域によって対応可 |
家族が代理申請する場合、多くの市区町村では申請書に「申請者(代理人)」の欄があるため、委任状は不要です。ただし、念のため各市区町村の窓口へ確認しましょう。
郵送申請・オンライン申請を使う
直接窓口に出向けない場合、以下の方法が使えます。
- 郵送申請:申請書・本人確認書類のコピーを送付(ほぼ全市区町村で対応)
- オンライン申請:マイナポータルを通じた申請に対応している自治体が増加中(2025年時点)
「帰れないとき」のケアマネへの依頼フロー
- 地域包括支援センターに電話し「子どもが遠方在住で代理で動けない」と伝える
- センターのスタッフが申請を代行するか、地域のケアマネジャーを紹介してくれる
- 委任状をメール・FAXで送付し、ケアマネが窓口申請を代行
- 訪問調査当日はケアマネが同席し、子どもへ報告
親が申請を嫌がるときの対処法

「まだ自分は大丈夫」「他人を家に入れたくない」「介護を受けるなんて情けない」——こうした言葉で申請を拒む親御さんは非常に多くいます。
「他人を家に入れたくない」への対応
❌ 「もう年なんだから諦めて」
✅ 「プロに入ってもらうほうが、私が毎週帰らなくて済むし、お父さんも気楽じゃない?」
介護保険のサービスは「家族の負担を減らすもの」というフレームで伝えると受け入れられやすくなります。
「まだ大丈夫」への対応
❌ 「どう見ても大丈夫じゃないでしょ」
✅ 「申請しておくだけで、使うかどうかはあとで決められるよ。調べるだけでもいい?」
認定を受けてもサービスを使う義務はありません。「選択肢を持っておくだけ」という伝え方が有効です。
「介護を受けるのは情けない」への対応
✅ 「○○さん(近所の知人)も利用してるって言ってたよ。うまく使ってる人のほうが賢いと思う」
身近な人が利用しているという情報は説得力があります。地域包括支援センターの職員から「一度話を聞くだけでも」と勧めてもらうのも効果的です。
兄弟姉妹で役割分担するときの進め方
- 主担当を1人決める:意思決定が分散すると親も混乱するため、窓口となる人を決めておく
- LINEグループで情報共有:病院・薬・日常の変化を全員が把握できる状態にする
- 得意な役割で分担:近くに住む兄弟が「実務」、遠方の兄弟が「調査・電話対応」など
要介護度別・使えるサービス一覧

認定を受けたあと、実際にどのサービスが使えるのかを確認しておきましょう。
在宅で利用できる主なサービス
| サービス名 | 内容 | 要支援1〜2 | 要介護1〜5 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護(ホームヘルプ) | 自宅での身体介助・生活援助 | △予防給付 | ○ |
| 訪問看護 | 看護師が自宅訪問 | ○ | ○ |
| 通所介護(デイサービス) | 日帰りで施設利用 | △予防給付 | ○ |
| 通所リハビリ(デイケア) | リハビリ中心のデイ | ○ | ○ |
| 短期入所(ショートステイ) | 数日〜1週間の宿泊 | △ | ○ |
| 福祉用具貸与 | 車椅子・介護ベッドなど | △一部 | ○ |
| 住宅改修 | 手すり設置・段差解消など | ○(上限20万円) | ○(上限20万円) |
施設に入所できるサービス
| 施設名 | 対象要介護度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 要介護3以上が原則 | 費用が比較的安い、待機期間が長い |
| 介護老人保健施設(老健) | 要介護1以上 | リハビリを中心とした一時入所 |
| 介護医療院 | 要介護1以上 | 医療的ケアが必要な長期入所 |
2024年度改定の区分支給限度基準額(月額)
上限額は介護度によって異なります。限度額の範囲内であれば、複数のサービスを組み合わせて利用できます(超過分は全額自己負担)。
| 区分 | 月の限度額 | 自己負担(1割)の目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 約5,032円 |
| 要支援2 | 105,310円 | 約10,531円 |
| 要介護1 | 167,650円 | 約16,765円 |
| 要介護2 | 197,050円 | 約19,705円 |
| 要介護3 | 270,480円 | 約27,048円 |
| 要介護4 | 309,380円 | 約30,938円 |
| 要介護5 | 362,170円 | 約36,217円 |
※出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
認定結果に納得できないときの「次の一手」

「申請したのに要支援1しか出なかった」「非該当(自立)と判定された」——こうした結果に疑問を感じたとき、泣き寝入りする必要はありません。
方法①:区分変更申請
認定後に状態が悪化した場合や、「実態に合っていない」と感じる場合は、区分変更申請ができます。
- 申請先:市区町村の介護保険担当窓口
- 費用:無料
- 再調査・再審査が行われ、約30日で新しい認定が出る
「認定から6か月経たないと更新できない」と誤解されることがありますが、区分変更はいつでも申請できます。
方法②:不服申し立て(審査請求)
認定結果に不服がある場合、都道府県の介護保険審査会に審査請求できます。
- 申請先:居住地の都道府県
- 期限:認定通知書を受け取った日の翌日から3か月以内
- 手続き:審査請求書を都道府県の担当窓口へ提出
審査請求と並行して、区分変更申請も行うことができます。
申請が却下・非該当になる主なケースと対策
| ケース | 対策 |
|---|---|
| 調査当日だけ状態が良かった | 「普段の状態」を書面で補足資料として提出 |
| 主治医の意見書と実態がずれている | 主治医に日常の詳細を伝え直す |
| 認知症の症状が過小評価された | 認知症専門医の受診 → 意見書の精度向上 |

「認定結果が低くても、すぐに諦めないでください。区分変更申請は誰でもできますし、書類1枚で手続きできます。ケアマネジャーさんに相談すると、一緒に動いてくれることが多いですよ。
よくある質問(Q&A)

Q1. 申請から認定まで何日かかりますか?
A. 原則30日以内ですが、自治体によっては混み合う時期に1〜2週間延長されることがあります。申請時に「急ぎの事情」がある場合(退院後すぐに介護が必要など)は担当窓口に伝えると、優先的に対応してもらえる場合があります。
Q2. 入院中でも申請できますか?
A. できます。 入院中の病院のある市区町村ではなく、住民票がある市区町村に申請します。病院のソーシャルワーカー(医療相談員)に依頼すれば、申請手続きをサポートしてもらえます。
Q3. 認定を受けたら必ずサービスを使わないといけませんか?
A. 使う義務はありません。 認定を受けても、ケアプランを作成せずにいることも可能です。ただし、認定には有効期間(通常1年〜3年)があり、更新申請が必要になります。
Q4. 引越したら認定はどうなりますか?
A. 転居先の市区町村に「受給資格証明書」を提示することで、認定を引き継げます。 ただし手続きが必要なため、転居前に現在の市区町村の介護保険担当窓口へ確認を。
Q5. 更新申請を忘れたらどうなりますか?
A. 有効期限が切れると、認定が失効します。 失効後にサービスを利用すると全額自己負担になります。更新申請は有効期間満了日の60日前から受付されるため、早めに動きましょう。市区町村から更新案内が届く場合もあります。
まとめ:今日できる「最初の一歩」は地域包括支援センターへの電話

要介護認定の申請は、複雑に見えますが、地域包括支援センターに電話するだけで動き始められます。
この記事のポイントをおさらいします。
- 申請しないと介護保険サービスは使えない。認定だけ受けてサービスを使わない選択もできる
- 遠距離でも代理申請ができる。地域包括支援センターが強力な味方になってくれる
- 訪問調査当日に「いいところを見せよう」とすると認定度が低くなるリスクがある
- 親が拒否していても、「調べるだけ」から始める提案が有効
- 認定結果に不満があれば、区分変更申請・不服申し立ての手段がある
まずは親の住所地の地域包括支援センターに電話してみる——それだけで、介護の「入口」に立てます。完璧に準備してからでなくていい。今日、電話を一本かけてみてください。

