介護の準備

親が認知症かも?と思ったら最初にすること【受診・相談・手続きの流れ】

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「最近、同じことを何度も聞く」「財布をしょっちゅうなくしている」「帰省したら部屋がひどく散らかっていた」——そんな変化に気づいたとき、多くの子どもは「まさかうちの親が…」という気持ちと向き合います。

認めたくない。でも、見て見ぬふりもできない。

この記事では、認知症の疑いが生じたときに最初にすべきことを、受診前の準備から診断後の手続きまでステップ順に解説します。さらに、「親が病院を嫌がる」「自分が遠くに住んでいて動けない」「きょうだいが大げさだと言う」というリアルな障壁への対処法も、具体的にまとめました。


Contents
  1. 「まさかうちの親が…」
    ——その戸惑いは正常な反応です
  2. 認知症とMCI(軽度認知障害)の違い
    ——「まだ間に合う」段階がある
  3. 今すぐ受診すべき理由
    ——2023年に状況が変わった
  4. 最初の一歩
    ——何科に行けばいい?受診前の準備リスト
  5. 親が「病院には行かない」と言うときの段階別対処法
  6. 遠距離で暮らしていても動ける
    ——帰省前にやること・当日の準備
  7. 診断結果が出たら
    ——確定前・確定後それぞれの次のアクション
  8. きょうだい・家族間で意見が割れたときの進め方
  9. まとめ:「気になった今日」が、選択肢が最も広い日

「まさかうちの親が…」
——その戸惑いは正常な反応です

家族がたどる4つの心理ステップ

公益社団法人「認知症の人と家族の会」の研究によると、家族は認知症の疑いや診断後に次の4つの心理ステップをたどることが多いとされています。

ステップ状態
①とまどい「なんかおかしい」「でもまさか」という気持ちが交錯する
②混乱現実を突きつけられ、何をすべきかわからなくなる
③割り切り「認知症と向き合おう」と受け入れ始める
④受容本人と家族なりの生活スタイルを見つける

「なかなか動けない」「見て見ぬふりをしてしまう」のは、①〜②のステップにいる自然な状態です。自分を責める必要はありません。

ただ、この記事を読み終えた後に「まず一歩だけ」行動していただけると、将来の選択肢が大きく広がります。

今の日本の現実——高齢者8人に1人が認知症

厚生労働省が2024年に公表した最新推計によると、2025年時点の認知症患者数は約471万人、有病率は12.3%と見込まれています。65歳以上の高齢者の約8人に1人が認知症という計算です(出典:厚生労働省「認知症及びMCIの高齢者数と有病率の将来推計」2024年)。

「うちの親に限って」という感覚は自然ですが、統計的には決して珍しいことではありません。


認知症とMCI(軽度認知障害)の違い
——「まだ間に合う」段階がある

MCIとは何か

MCI(軽度認知障害)とは、認知症の一歩手前の状態です。記憶力などの認知機能は低下しているものの、日常生活には大きな支障がない段階を指します。

認知症との違い:日常生活(食事・着替え・外出など)は基本的に自分でできる。

MCIは「認知症」ではない——回復・維持できる可能性がある

MCIの方がその後1年で認知症に移行する割合は年間10〜15%とされています。逆に言えば、適切な対処(薬物療法・生活習慣の改善・認知リハビリ等)で認知症への移行を遅らせたり、回復できる場合があるのです。

「もの忘れが増えてきた」と感じる段階こそが、最も介入効果が高いタイミングです。「認知症かも」と思ったら、その段階がまだMCIである可能性があり、今動くことに大きな意味があります


今すぐ受診すべき理由
——2023年に状況が変わった

新薬「レカネマブ」の登場で早期受診の価値が急上昇

2023年12月、アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ(製品名:レケンビ)」が日本で保険適用されました。これは認知機能の低下を約27%抑制する効果が確認された、世界初クラスの疾患修飾薬です。

しかし、この薬には重要な条件があります。

適用対象は「軽度認知障害(MCI)〜軽度の認知症」段階のみ

中等度・重度に進行してからでは、この薬を使うことができません。

つまり、早期に受診して診断を受けることが、治療の選択肢を最大化する唯一の方法です。「もう少し様子を見てから」という先送りが、使える薬の選択肢を閉ざしてしまう可能性があります。

※レカネマブの適用には複数の条件があります。詳細はかかりつけ医または専門医にご確認ください。
※出典:国立長寿医療研究センター「アルツハイマー病の新しい治療薬レカネマブについて」

早期診断で使える支援・サービスが広がる

診断が確定することで、以下の支援にアクセスできるようになります。

  • 介護保険サービスの利用(要介護認定申請が可能になる)
  • 認知症施策推進大綱に基づく地域支援(認知症サポーター・認知症カフェ等)
  • 本人が意思能力のあるうちに行える法的手続き(後述)
  • 自治体の独自支援サービス(徘徊SOSネットワーク登録等)
Roka所長
Roka所長

レカネマブの登場は、認知症ケアにとって本当に大きな転換点でした。『早く受診しても治らないから』という時代は終わりつつあります。だからこそ、疑いを感じたら早めの行動が大切です。


最初の一歩
——何科に行けばいい?受診前の準備リスト

受診のルート

ステップ1:まずかかりつけ医に相談

認知症の専門科に直接行く前に、まずかかりつけ医(内科・かかりつけクリニック)に相談するのが最も自然で親の抵抗感も少ない方法です。かかりつけ医が「専門的な検査が必要」と判断した場合、専門科に紹介してもらえます。

ステップ2:専門科への受診

  • もの忘れ外来:認知症専門の外来。全国の基幹病院に設置
  • 脳神経内科:脳・神経系の専門科。認知症の診断・治療に対応
  • 精神科・神経精神科:行動・心理症状(BPSD)が強い場合に適切
  • 認知症疾患医療センター:全国約500カ所。専門的な診断・相談が可能

かかりつけ医がいない場合や、直接専門機関を探したい場合は「認知症疾患医療センター」に連絡するのが確実です。

受診当日の持ち物チェックリスト

  • 健康保険証・介護保険被保険者証(65歳以上の場合)
  • かかりつけ医の紹介状(ある場合)
  • お薬手帳
  • 症状記録メモ(下記参照)

症状記録メモ——事前に書いておくと診察がスムーズ

診察室では緊張して症状を正確に伝えられないことがあります。以下を事前にメモしておきましょう。

記録すべき内容
1. いつ頃から変化に気づいたか(「半年前から」「1年くらい前から」)
2. どんな場面で困っているか(「同じ話を1時間に3回繰り返す」「財布を週2回以上なくす」)
3. 日常生活への影響(「一人での外出が不安」「薬の飲み忘れが増えた」)
4. 既往症・現在飲んでいる薬(薬の副作用で認知機能が低下するケースもある)
5. 家族歴(アルツハイマー病の血縁者がいるか)

具体的な数字・頻度・期間で記録するほど、診断の精度が上がります。

検査費用の目安

初診での認知症検査の費用(保険適用3割負担の場合)は、問診・神経心理学検査(長谷川式・MMSEなど)で2,000〜5,000円程度が目安です。MRI・CTなどの脳画像検査が加わる場合は、5,000〜15,000円程度になります(施設・検査内容によって異なります)。


親が「病院には行かない」と言うときの段階別対処法

親が受診を拒否するのは非常によくあることです。背景には2つのパターンがあります。

パターンA「自分はおかしくない」型:認知症を認めることへの恐怖・プライドから「私は正常だ」と主張する

パターンB「怖い・不安」型:診断されることで生活が変わることへの漠然とした不安

段階別の対処法

①「認知症」という言葉を使わない

❌「もの忘れが心配だから認知症の検査に行って」
✅「最近疲れが取れにくいみたいだから、健康診断を兼ねて脳のMRIを撮ってもらおう」
✅「血圧の薬をもらいに行くついでに、先生にもの忘れのことも聞いてみよう」

かかりつけ医への受診を「いつもの通院」の延長として位置づけると、抵抗感が大幅に下がります。

②家族だけで先に医師に相談する

本人が受診を拒否している段階でも、家族だけでかかりつけ医や地域包括支援センターに相談することができます。「本人が受診を嫌がっている」という状況を専門家に相談すると、具体的なアドバイスがもらえます。

③「認知症カフェ」「家族の会」を経由する

認知症カフェや「認知症の人と家族の会」のつどいに、家族として参加してみましょう。同じ悩みを持つ家族と情報交換ができるだけでなく、本人を連れて行ける場合もあります。

フリーダイヤル(認知症の人と家族の会):0120-294-456(平日10〜15時)

④訪問診療・在宅での認知機能チェックを依頼する

「外に出るのを嫌がる」場合は、訪問診療医に自宅での認知機能評価を依頼する方法もあります。かかりつけ医に訪問診療への切り替えを相談してみてください。


遠距離で暮らしていても動ける
——帰省前にやること・当日の準備

受診に付き添うための帰省タイミングの決め方

「受診のためだけに帰省するのはハードルが高い」と感じる方も多いです。しかし受診への付き添いは、診察室での情報提供・症状の補足に家族の存在が非常に重要です。

帰省タイミングの決め方
1. まず親に「健康診断に一緒に行こう」と電話で提案・合意を得る
2. 希望する病院・クリニックに事前電話で「家族が付き添い予定」と伝え、予約を取る
3. 予約日に合わせて帰省日程を確定する

「自分の都合で帰省日を決めてから病院を探す」より、「病院の予約から逆算して帰省日を決める」方がスムーズです。

帰省前の遠距離チェックリスト

帰省前にできること(電話・オンラインで可)

  • 親が住む地域の地域包括支援センターに電話し、「親に認知症の疑いがあり、受診を勧めたい」と相談する(無料・匿名可)
  • かかりつけ医の連絡先・診察日程を確認する
  • 「もの忘れ外来」「認知症疾患医療センター」を事前にリストアップする
  • 症状記録メモを電話・LINEで聞き取り、書き出しておく

帰省当日にやること

  • 受診の同席(「家族として気になっていることを先生に伝えたい」と一言添える)
  • 診断・検査結果の内容をメモする(スマートフォンで録音も可・医師に確認を)
  • 次回の診察予定を確認し、誰が付き添うか決める
  • きょうだいへ診察結果を共有する(LINEの一斉送信でOK)
Roka所長
Roka所長

遠距離でも、帰省前に地域包括支援センターに電話を一本入れておくだけで、動き方が変わります。『何をすればいいかわからない』という状態で帰省するより、事前に相談してから向かう方が、限られた滞在時間を有効に使えます。


診断結果が出たら
——確定前・確定後それぞれの次のアクション

診断前(疑いの段階)から始めておくこと

認知症の診断が確定する前でも、以下は並行して進めておくことを強くおすすめします。

①財産・重要書類の確認
– 通帳・証書・不動産権利書の場所を確認する
– 定期的な引き落とし・年金振込口座を把握する

②要介護認定申請の準備
– 認知症の診断がなくても「日常生活に支障が出ている」と判断されれば申請可能
– かかりつけ医の意見書が必要なため、受診との連携が重要

診断確定後:タイムリミットのある手続き

認知症と診断された後、判断能力が低下する前に済ませておくべき手続きがあります。進行してからでは、法的に有効な手続きができなくなります。

手続き期限の目安内容
任意後見契約判断能力があるうちに将来の後見人を本人が自ら選んでおく契約
家族信託判断能力があるうちに財産管理を信頼できる家族に委ねる仕組み
遺言書の作成判断能力があるうちに自筆証書・公正証書いずれも意思能力が必要
生前贈与判断能力があるうちに相続税対策として活用する場合も

これらの手続きは「まだ大丈夫」と思っているうちに済ませておくことが重要です。認知症の進行は予測が難しく、「そろそろ手続きしよう」と思ったときには、法的に有効な手続きができなくなっているケースも少なくありません。

早めに司法書士・行政書士・弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。


きょうだい・家族間で意見が割れたときの進め方

よくある意見の相違パターン

  • 「母はまだ大丈夫」と否定する父親・配偶者
  • 「大げさじゃない?」と言うきょうだい
  • 「仕事が忙しくて動けない」という兄弟

こうした意見の相違は、「見ている量の差」と「受け入れたくない気持ち」の両方から生まれます。感情的に対立しても解決にならないため、事実を共有することが第一歩です。

事実ベースで共有する

「認知症っぽい」という印象論ではなく、記録した事実を共有します。

「先月の帰省時に同じ話を1時間に4回聞いた。冷蔵庫に同じ食品が5個あった。郵便物が3週間分溜まっていた。写真もある。一度一緒に確認してほしい」

具体的な事実(頻度・数・写真)があると、「大げさ」という反論が入りにくくなります。

家族会議の設け方

全員が集まれる機会に、以下の議題で短時間(30分程度)の話し合いを設けましょう。

  1. 現状の確認(気になっている症状を全員で共有)
  2. 受診の方針(誰が付き添うか・いつ行くか)
  3. 当面の役割分担(主担当を1人決める)

「誰が正しいか」を決める場ではなく「どう動くか」を決める場として設定することで、感情的な対立を避けられます。


まとめ:「気になった今日」が、選択肢が最も広い日

認知症は、早く気づくほど使える治療・支援・手続きの選択肢が増えます。2023年にレカネマブが保険適用されたことで、「早期診断=早期治療」の意味がこれまで以上に大きくなりました。

この記事のポイントをおさらいします。

  • 「まさかうちの親が」は自然な反応。戸惑いながらでも動けばいい
  • MCIの段階なら、適切な対処で認知症への移行を遅らせられる可能性がある
  • レカネマブ(新薬)は軽度段階のみ適用。早期受診が治療選択肢を守る
  • 受診前に症状記録メモを作成しておくと診察がスムーズになる
  • 受診拒否には「健診・かかりつけ医の通院の延長」として誘うのが有効
  • 遠距離でも帰省前に地域包括支援センターへ電話するだけで動き方が変わる
  • 診断確定後の法的手続き(家族信託・任意後見)にはタイムリミットがある
  • きょうだい間の意見相違は事実の共有から始める

「もしかして」と感じた今日が、最も多くの選択肢がある日です。まずは地域包括支援センターへの電話、またはかかりつけ医への相談から始めてみてください。


ABOUT ME
Roka所長
Roka所長
親孝行のプロを目指すファイナンシャルプランナー
親孝行が趣味のファイナンシャルプランナー。10年近く離れて暮らしていた70代の母親と同居中。 シニア世代や家族が直面する、お金のこと、介護のことなど漠然とした不安を見える化して解決したい!との想いから親孝行ラボ(研究所)を立ち上げ。 シニア世代とその子どもであるミドル世代、どちらの不安も解消して幸せに暮らせる情報をお届けします!
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